買ってはみたけど結局あまり着なかった服や、まだきれいだけれど趣味でなくなってしまった服を手放したくなった時、
UNIQLOやZARA、H&M等の店舗に設置されたリサイクルボックスにそれらを入れたことがある人も多いはず。
いつまでもクローゼットに埋葬しておくわけにはいかないけれど、フリマサイトや古着ショップでも買い手が見つけられない時、
誰かの役に立つかもしれないという善意が、まだまだ着られる服を手放す時の罪悪感を和らげてくれる。
だけど、
リサイクルボックスのその先で、その善意はどうなっているのでしょうか?
送られた側の人々は、果たして本当に全員がハッピーになっているのでしょうか?
問題①アフリカのガーナには毎週1500万着の衣類が世界中から運び込まれ、そのうち4割がガーナで埋め立て処分されていると聞いたら、あなたはどう思いますか?
問題②先進国からの古着の大量流入により、先進国に依存せず自立しようとしていた現地の繊維・服飾産業が多く失業していると聞いたら、あなたはどう思いますか?
結局発展途上国で廃棄されているのが実情
私たちがリサイクルや寄付に寄せた古着の多くは、海外の発展途上国に送られています。パキスタンやインド、マレーシアで多く輸入され、最終的に誰にも買われなかった衣服がアフリカや中南米に集まると言われています。
国連の調べによると、ある年にはアメリカから71万トン、ドイツから53万トン、日本からは24万トンもの古着が輸出され、発展途上国には数日おきにとんでもない量の古着が入ってきているというのです。
そして、その多くは埋め立て処分されているとのこと。
この画像はガーナのごみ処分場です。
ファストファッションの台頭もあり、西側諸国ではこの15年で衣服の購買量が60%も増えました。
それに伴って古着の流入量も増加し、ファストファッションの衣服にはほつれや痛みがあるものも多く、ゴミ箱行きになるものが多いとか。
ガーナの埋め立て地は満杯だといいます。
さらに石油を原料とする化学繊維やポリエステル製の物も多く、埋め立て地からそれらの繊維やそこに含まれるマイクロプラスチックが海に流れ、海を汚し、海洋生物を窒息させているというのです。
そのような繊維は土の中で分解されないため、埋め立てられた後には土壌汚染の原因にもなります。
遠い海外への大量の古着の輸送には、大量の二酸化炭素が排出されていることも忘れてはいけません。
ゴミの押し付けになっていないか?
要らなくなった人は手放すことができたけど、現地でニーズがなければゴミを送り付けているのと同じこと。
そっちで要らないものはこっちも要らないのです。
寄付をする時は”自分が要らないもの”という起点ではなく、”現地でどんなものが必要とされているか”という視点で始めなければいけません。
そうでないと、寄付が善意の名を借りたゴミの押し付けになってしまいます。
現地の産業発展や自立を妨害している
ガーナでは各国の代理業者がガーナの卸売市場に古着を輸出し、卸商人が現地の人に古着を売っています。
その結果ガーナでは国民の4分の3が、先進国からの古着を着用するようになったとのこと。
新しい服の生産コストは古着の40倍以上かかり、又紡績労働者は一年間働いてようやくなれるという技術を要するものでもあるため、現地の服飾産業に携わる人々は先進国からの古着に太刀打ちできなくなったというのです。先進国から大量の古着が流入することにより、現地のほとんどの紡績工場が倒産し、残る業者も生産量が激減。服飾産業に携わっていた人々が多く失業していると聞きました。
こうした中、古着を大量に受け入れている途上国からは反発の動きも出ています。タンザニアやウガンダなどで作る「東アフリカ共同体」は2016年、地域の産業を保護するため、外国からの古着の輸入を禁止することで合意しました。しかしこれに待ったをかけたのが古着の輸出大国のアメリカでした。アメリカの古着の業界団体が「輸出できなくなれば経済的な損失が大きいほか、アメリカで廃棄されればアメリカ国内の環境が損なわれる」と猛反発したのです。結局超大国アメリカからの圧力を受けた東アフリカ共同体は輸入禁止を断念。衣服が先進国から途上国に流れ着く構図はいまも続いています。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220218/k10013486591000.html
又、アフリカには鮮やかな布で織られた伝統衣装の文化があったが、その伝統も奪われつつあるとのこと。
アフリカは世界中から大量の資金援助を受けているにもかかわらず(過去50年で欧米諸国はアフリカに230兆円以上支援している)いつまでも発展途上国のままなのは、先進国からの援助に依存し、自立が育たないからと言われています。
アフリカが自立できないのは寄付のせい?
古着商人という雇用はあるものの、
先進国が本来すべきことは、魚を与えることではなく魚の取り方を教えてあげること。
アフリカの人々が他国からの援助に依存せず自立できるよう支援すべきなのに、国際援助が現地のビジネスを破壊して、彼らの自立を阻んでいる側面があるのです。
私たちが寄付ボックスに寄せた服が、途上国をいつまでも途上国のままにさせているのかもしれません。
私たちが本当にすべきこととは?
ファッションブランドもテクノロジーを駆使して古着を新しい服へ作り変えたり、古着を燃料として再利用したり、さまざまな取り組みにトライしています。
難民キャンプなど極端に物資の足りないところでは、送られてきた服が役に立っているでしょう。
だけど、
半分近く廃棄せざるをえない状況の途上国に毎週のように大量の先進国の古着を送り付けるほど不要な衣類が発生するというのは、先進国の私たちの消費の仕方に問題があるはず。
世界で生産される服の量は2000年からおよそ2倍になりました。
日本では、1人が年間に購入する服は平均18着。その一方で一年で1度も着ない服は平均25着。
さらに女性は平均たったの7回着用後に服を手放してしまうのだとか。
”安価だからとりあえず買ってみて、要らなくなったらリサイクルボックスに出せばいい”というのはとても短絡的な行動だとお分かりいただけたかと思います。
今ある服を大切に着る
買う前にはよく考えてから買う
古着を買ってみる
家族やカップルで服をシェアする
レンタルサービスを活用する
修繕しながら着続ける
デザインに飽きたらリメイクする
要らなくなったら誰かにゆずる
etc…
自分にできそうなことを、一つからでも始めてみませんか?
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