今あなたの着ているその服が
どのような環境で素材が調達されて生地になり、
どんな人がどんな労働環境で働いて作られてあなたの手元へ運ばれてきたか、
考えたことはありますか?
ファッション業界は、二酸化炭素の大量排出に、大量の水資源の利用と水質汚染、コットン栽培の農薬散布による土壌汚染…石油業界に次いで二番目に環境に負荷をかける産業と言われています。
衣服は私たちの生活に欠かせないものだから、必要悪なのでしょうか?
でも、それらが大量に捨てられているとしたらどうでしょうか?
世界では毎秒トラック一台分の衣類が廃棄され、毎年シドニー湾を埋め尽くす量なのだそう。
服を作るのに必要な綿花や染料、皮革加工に携わる労働者は、有害な農薬や化学物質によって深刻な健康被害に苦しんでいる人がたくさんいます。その上低賃金で長時間の強制労働を強いられるなど、搾取や人権侵害のはびこる劣悪な労働環境で働いている人も大勢います。
そんな誰かの犠牲の上で作られた服を、あなたは着たいと思いますか?
環境に多大なる負荷をかけながら大量に生産し
発展途上国の人たちの人権や健康被害を代償に生産されたそれらを
先進国では毎年大量に捨てている。
【問題①】環境への負荷は全産業の中で世界二位
ファッション業界は、石油業界に次いで二番目に環境に負荷をかける産業と言われています。
具体的にどのような形で負荷がかかっているというのでしょうか?
二酸化炭素排出量は全産業で2位
ファッション業界の二酸化炭素排出量は、航空業界と運送業界の合計を超えるほど。
服一着を作るのに排出される二酸化炭素量は25.5㎏。
生産過程における工場での排出に加え、海外からの大量の輸送において、さらに焼却処分でも、二酸化炭素を排出しています。
深刻な水不足の大きな原因と指摘されるファッション業界
世界では水不足が深刻な地域も多くあります。
発展途上国では子供が清潔な水を手に入れられずに川からくんだ汚い水を飲んでいたり、それが原因で病気になり長く生きられない人が大勢います。
その一方で、Tシャツたった1枚を作るのに必要な水の量は2500リットル。飲料水5年間分、バスタブ約12杯分だそう。
WWFは、”今すぐ保全対策を打たなければ、世界人口の約半数が2030年までに深刻な水不足に直面する。こうした問題の大きな原因の一つと考えられているのが、アパレル産業、特にコットンをめぐる産業。”と指摘しています。
生産に大量の水資源を必要とする洋服。同じ地球上には清潔な水が手に入らなくて命や健康を脅かされている人が大勢いる裏で、私たち先進国の人間は、限りある水資源を使って生産された服を、安易に使い捨ててはいないでしょうか?
生地の染色やコットン栽培の農薬で汚染される水
世界の水質汚染のうち、20%がファッション産業が原因になっているとも言われています。
発展途上国は環境に関する法律が不十分なところも多く、染色の過程で汚染された水が、川や海に流されてしまうのだとか。
又衣服の原材料となるコットンの栽培では、供給を間に合わせるために大量の農薬を散布するため、土壌に浸透した農薬が水資源を汚染しているとも。
埋立処分場からポリエステルやマイクロプラスチックの流出
昨今大量生産されている衣類は日々大量に捨てられています。
石油を原料とする化学繊維やポリエステル製の物も多く、埋め立て地からはそれらの繊維やそこに含まれるマイクロプラスチックが海に流れ、海を汚し、海洋生物を窒息させているというのです。
そのような繊維は土の中で分解されないため、埋め立てられた後には土壌汚染の原因にもなっています。
【問題②】労働者の労働環境は劣悪、農家では自殺者が過去一の悲劇
コットン製の洋服が数100円代からの安い価格で買えるのは、企業努力だけで実現されていると思いますか?
こんなにも安く製品が生産されるその過程には、人権や健康に配慮されず、良好とはいえない労働環境で、低賃金で長時間働かされた人たちがいたとしたら、あなたはそんな風に作られた服をこれからも喜んで買いたいと思いますか?
衣服工場の労働環境は劣悪
世界の衣服工場の労働者は約4000万人。女性が85%、人件費の安い発展途上国が中心です。
日給は2ドル程度と低賃金、
自分の子供に年に数回しか会えないほど過酷でな長時間労働、
そんな劣悪な労働環境で働いている人が決して少なくありません。
生産過程にいる人々の健康被害
革のなめし加工のプロセスは、ファッションのサプライチェーンの中でもっとも有毒なものなのだそう。
革のなめし加工に従事する労働者はこのプロセスの中で有害な化学物質にさらされ、がんのリスクが20%〜50%も増加するといいます。
さらにここで発生する廃棄物は水資源を汚染し、周辺地域における病気の増加をもたらしています。
手摘み作業を必要とするコットン栽培では、農薬が労働者の素手に触れたり素足で踏んだり、散布時に直接皮膚に触れたり、防護服を買うお金のない労働者もいます。その結果手肌が皮膚疾患を患うほか、毎年7700万人の農民が中毒死や深刻な健康被害に苦しんでいるという報告もあるほど。ある地方ではたくさんの奇形児が産まれたという事態も生じました。
コットン生産者のみならず、農薬は地面から地下に浸透して地域の水質も汚染し、周辺地域の人々の健康被害も懸念されます。
小規模農家の経営難で自殺者の急増も
1995年以来、27万人以上のインドのコットン農家が自殺しており、貧困との関連性が指摘されています。
インドやパキスタンでは家族経営の農家が多く、農業に必要となる肥料や殺虫剤・遺伝子組み換え種子を借金して購入するところから始まります。しかしコットンの市場価格はどんどん安くなっていき、いくら生産量を増やしても収入向上につながらず、結果借金苦で自殺してしまう農家が後を絶たず、30分に一人が自殺しているという報告もあるほど。
児童労働も深刻な問題
インド国内のコットン関連産業では、約50万人の子供たちが児童労働をしていると推定されています。幼い子供たちが教育の機会を奪われ、毒性の高い化学物質や危険な道具を使って過酷な労働環境で働かされているのはとても深刻な人権問題です。
【問題③】大量に廃棄される衣服たち
環境へ多大な負荷をかけ、労働者が時に健康や人権を脅かされながら作られた服たち。
しかし、袖を通されずに捨てられる新品の服は、日本だけで一人当たり8着、年間10億着と言われています。生産されている4枚に一枚です。
イギリスでは生産された服のうち、5着中3着は一年位内に埋め立て処分されているそう。
ファストファッションの台頭で、以前と比較してとても安価になった服たち。
世界で生産される衣服の量は、2000年から2014年で約2倍となりました。
環境省が行った調査では、日本で1人が年間に購入する服は平均でおよそ18着。その一方で、年間1度も着ない服は平均でなんと25着。
この20年で、アメリカでの服の購入量は約4倍にもなっているとも。
そして、大量に生産され、大量に消費されたその後は?
世界では毎秒トラック一台分の衣類が廃棄され、その数は毎年3000億着。毎年シドニー湾を埋め尽くす量なのだそう。
大切に愛するものであったはずの服たちが、使い捨ての消耗品になっている。
企業は廃棄を前提としている?
アパレルメーカーから新品で販売される服が38億点、そのうち購入されるのは半分強の20億点。
企業側もまた18億点を新品のまま廃棄しているとか。
そうなってしまう理由が以下のように考察されていました。
- 業界、需要の予測が難しく、どれくらい作ればいいかわからない
- シーズンがかつての春夏秋冬の4シーズンから、毎週新製品を展開することで、消費者につねに新しいアイテムを提案して購入させようとしている
- SNSの普及がトレンドの移り変わりの速さを加速させている
- 大量に作るほうが工場は安く作ってくれるから、大量に生産し大量廃棄する法がコストダウンになる
- 売り場がガラガラだと売れないから、わざと作りすぎて捨てる
- 在庫を抱えていると管理コストがかかる
- さらに在庫には課税されるが廃棄処分すれば処分費用は経費計上できて節税になるため、新品でも廃棄してしまうほうがよいとなる
発展途上国に寄付すればいいと思っていますか?
私たちのいらなくなった服は、服を買うことのできない貧しい国の人にあげればいい?
それは短絡的かもしれません。
発展途上国には、寄付という名目で毎日毎週大量の古着が先進国から送られてきます。
そして送り付けられた途上国では、その4割近くを埋め立て処分しています。
ゴミ処理技術が十分に発達していない途上国では、不要衣類の埋め立てによる土壌汚染や化学繊維の海洋流出と水質汚染を引き起こし、さらに、現地で自立しようと頑張る起業家たちの自立さえ阻んでいる側面もあるのです。
消費者側が意識を変える
服の生産が環境に多大な負荷をかけるとしても、衣服は人間の生活に欠かせないものだから、一定量は必要悪だと思います。
しかし、こんなにも大量に捨てられているとしたらどうでしょうか?
必要以上に生産され過ぎていると言わざるを得ないと思いませんか?
大量生産から適量生産に回帰すべきだと思いませんか?
生産に大量の水資源を必要とする洋服。同じ地球上には清潔な水が手に入らずに、命や健康を脅かされている人が大勢いる裏で、私たち先進国の人間は、限りある水資源を使って生産された服を、あまりにも安易に使い捨ててはいないでしょうか?
低価格でたくさん売ることで利益を生み出すビジネススタイルのファストファッション。価格競争のため、安く販売するために、生産過程で子供や女性、途上国の農家などでは低賃金の長時間労働で酷使されている人がいます。
誰かの人権や健康の犠牲の上で作られた服を、安いから、可愛いからと言ってあなたは喜んで着たいと思いますか?
大量生産・大量消費・大量廃棄社会は、環境、人権、健康を深刻に脅かしています。
そんな社会を作っているのは私たちでもあります。
このようなブランドの服を買うということは、間接的にそういうブランドを応援しているということ。
そんな産業に投資したくないと思うなら行動を変えてみよう。
生産者は売れないものは作らなくなる。
だから消費者側である私たちが意識を変え、モラルと思いやりのある行動に変えていけばいいのです。
これからできる服とのつきあい方、アクションをまとめました。
https://ellybelog.net/【まとめ】服とのつきあい方10/
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